セブン&アイ・ホールディングスの井坂隆一社長は、2023年5月25日に開かれた株主総会で続投が決まりました。
これは、米投資ファンドのバリューアクト・キャピタルが井坂社長や副社長ら4人の退任を求める取締役選任案を提案していたにもかかわらず、会社側が反対表明し、株主の多数の支持を得たためです。報道からその状況をまとめてみました。
バリューアクトの提案に賛成した株主は、株主総会での投票結果によると、約3割とのことです。これは、井阪社長らの退任を求めるには不十分な数であり、会社側の議案が賛成多数で可決されました。
井坂社長の再任については、株主総会での表決数は公表されていませんが、会社側が提案した井坂社長を含む15人の取締役選任議案は賛成多数で可決されたと報じられています。一方、米投資ファンドのバリューアクト・キャピタルが提案した井坂社長ら4人の退任を求める取締役選任案は否決されました。株主総会には約2000人の株主が出席し、議案に対する賛否を投票用紙で表明しました。
バリューアクト・キャピタルは、セブン&アイ・ホールディングスの井坂社長らの退任を求めた理由として、以下の点を挙げています。
井阪社長は就任して7年間、野心的な戦略や明確なプランを推進せず、選択と集中に手間取ったとして、リーダーシップに問題があると指摘しています。
セブン&アイのガバナンス(組織統治)が不十分で、執行側と独立した取締役との関係にも問題があると指摘しています。
コンビニエンスストア事業に経営資源を集中するよう求め、コングロマリット構造の現状維持は市場に混乱と失望を与えると指摘しています。
セブン&アイの2023年2月期決算は過去最高でしたが、それは外部要因によるものであり、業績は企業が持つ潜在能力に達していないと指摘しています。
井坂氏は、青山学院大学法学部を卒業後、1980年にセブン-イレブン・ジャパンに入社しました。商品本部食品部シニアマーチャンダイザーなどを歴任し、2009年に同社の代表取締役社長に就任しました。2016年にはセブン&アイ・ホールディングスの社長に昇格し、コンビニエンスストア事業やデジタル戦略などを推進しています。
井阪社長は再任に対して、以下のようにコメントしました。
- バリューアクトとは30回以上の対話を続けてきたが、ある部分でどうしても相容れないところがあると述べました。
- スーパー事業の切り離しはセブン-イレブンの成長を阻害することにつながると主張しました。
- 総会検査役を裁判所にお願いしたことで、投票が公正な結果であることを証明してもらおうと考えていると述べました。
- 財務的な計画はすべてクリアしており、最高益も出していることから、株主総会で理解を得られるだろうと述べました。
一方バリューアクトは、株主総会での提案の否決に対して、以下のようなコメントを発表しました 。
- セブン&アイの株主の約3割が提案に賛成したことは、同社の経営改革に対する強い期待と圧力を示していると述べました。
- セブン&アイの株主として、同社の長期的な価値創造に貢献するために、引き続き建設的な対話を求めていくと述べました。
- セブン&アイがコンビニエンスストア事業のスピンオフやガバナンスの改善など、自ら提案した中期経営計画に沿った施策を実行するかどうかを注視していくと述べました。
コンビニエンスストア事業のスピンオフとは、セブン&アイ・ホールディングスが傘下のセブン-イレブン・ジャパンを切り離して独立させることです。バリューアクト・キャピタルは、このスピンオフによって、コンビニエンスストア事業の成長機会を最大化し、企業価値を高めることができると主張しています。しかし、セブン&アイ・ホールディングスは、コンビニエンスストア事業はグループ全体の中核事業であり、スピンオフする必要はないと反論しています。