目次
1. 概況
セブン&アイ・ホールディングスの2025年2月期第1四半期(2024年3月1日~2024年5月31日)の連結業績は、以下の通りとなった。
- 営業収益:2兆7,347億円(前年同期比3.2%増)
- 営業利益:593億円(同27.6%減)
- 経常利益:550億円(同25.4%減)
- 親会社株主に帰属する四半期純利益:213億円(同49.3%減)
営業収益は増加したものの、利益面では大幅な減少となった。この背景には、国内外の経済環境の変化や消費動向の変化、そして海外事業における一時的な要因などが影響している。
2. セグメント別分析
2.1 国内コンビニエンスストア事業
- 営業収益:2,249億円(前年同期比1.8%減)
- 営業利益:612億円(同4.4%減)
株式会社セブン-イレブン・ジャパンの既存店売上は前年並みとなった。人口減少や少子高齢化、物価上昇、実質賃金の低下などの環境変化に対応するため、基本商品の強化や品揃えの拡充、新たな買い物体験の提供などに注力している。デリバリーサービス「7NOW」の全国展開に向けた取り組みも進めている。
チェーン全店売上は1兆3,270億円(同0.2%増)と微増となった。新しいコンセプトの「SIPストア」をオープンするなど、多様なニーズへの対応を図っている。
2.2 海外コンビニエンスストア事業
- 営業収益:2兆294億円(前年同期比6.8%増)
- 営業利益:44億円(同78.7%減)
北米の7-Eleven, Inc.は、インフレや高金利環境下で消費の二極化が進む中、厳しい状況に直面している。米国内既存店商品売上は前年を下回り、営業利益(のれん償却前)は299億円(同31.4%減)と大幅に減少した。
一方で、チェーン全店売上は2兆4,278億円(同7.1%増)と増加している。これは主に為替の影響によるものと考えられる。
7-Eleven International LLCは、2024年4月1日にオーストラリアの7-Eleven事業を買収するなど、積極的な海外展開を進めている。
2.3 スーパーストア事業
- 営業収益:3,592億円(前年同期比0.3%減)
- 営業利益:21億円(同35.1%減)
株式会社イトーヨーカ堂は、収益性改善に向けた変革を進めているものの、6億円の営業損失を計上した。一方、株式会社ヨークベニマルは、既存店売上が前年を上回ったが、販促費用や人件費の増加により、営業利益は43億円(同4.3%減)となった。
2.4 金融関連事業
- 営業収益:523億円(前年同期比2.7%増)
- 営業利益:83億円(同15.8%減)
株式会社セブン銀行のATM設置台数は27,552台(前期末比182台増)となった。ATM総利用件数は前年を上回り、1日1台当たりのATM平均利用件数は107.2件(前年同期比3.2件増)となった。
2.5 その他の事業
- 営業収益:858億円(前年同期比31.3%減)
- 営業利益:21億円(同18.2%増)
事業ポートフォリオの見直しによる事業会社の譲渡等の影響で減収となったが、人流回復に伴い株式会社ロフトなどの業績が好調に推移し、増益となった。
3. 財政状態の分析
- 総資産:11兆2,234億円(前期末比6,313億円増)
- 負債:7兆2,322億円(同5,407億円増)
- 純資産:3兆9,912億円(同906億円増)
総資産の増加は主に為替レートの変動によるものである。負債の増加は、為替レートの変動とConvenience Group Holdings Pty Ltd(SEA)の取得に伴う資金調達によるものである。純資産の増加は、主に為替換算調整勘定の増加によるものである。
4. キャッシュ・フローの状況
- 営業活動によるキャッシュ・フロー:2,361億円(前年同期比25.7%減)
- 投資活動によるキャッシュ・フロー:△3,168億円(同233.2%増)
- 財務活動によるキャッシュ・フロー:△1,317億円(同47.8%減)
営業活動によるキャッシュ・フローの減少は、主に銀行業におけるコールマネーの純増減が減少したことによる。投資活動によるキャッシュ・フローの大幅な支出増加は、SEAの買収などによるものである。財務活動によるキャッシュ・フローの支出減少は、短期借入金の増加などによる。
5. 今後の展望と課題
- 国内コンビニエンスストア事業の強化
- 基本商品の磨き上げと品揃えの拡充
- デリバリーサービス「7NOW」の全国展開
- 新コンセプト店舗「SIPストア」の展開と検証
- 海外コンビニエンスストア事業の立て直し
- 北米事業の収益性改善
- Sunoco LP社からの事業取得によるシナジー創出
- オーストラリア事業の統合と成長戦略の実行
- スーパーストア事業の構造改革
- イトーヨーカ堂の収益性改善
- ヨークベニマルの競争力強化
- デジタル戦略の推進
- 「7iD」会員基盤の整備
- デリバリーサービスやネットスーパーを支えるラストワンマイルDXプラットフォームの深化
- 財務基盤の強化
- 有利子負債の管理
- 資本効率の向上
- グループシナジーの追求
- グループ共通基盤システムの構築
- クロスセル・アップセルの促進
6. 結論
セブン&アイ・ホールディングスの2025年2月期第1四半期決算は、営業収益こそ増加したものの、利益面では大幅な減少となった。特に海外コンビニエンスストア事業の不振が目立つ結果となった。
国内コンビニエンスストア事業は安定的な推移を見せているが、成長率は鈍化している。スーパーストア事業や金融関連事業も厳しい状況が続いており、グループ全体としての収益力強化が急務となっている。
一方で、オーストラリア事業の買収やSunoco LP社からの事業取得など、積極的な海外展開も進めている。これらの新規事業の統合と既存事業とのシナジー創出が、今後の成長のカギとなるだろう。
また、デジタル戦略の推進や新たな店舗コンセプトの導入など、変化する消費者ニーズに対応する取り組みも進めている。これらの施策が功を奏し、中長期的な成長につながるかが注目される。
財務面では、海外事業の拡大に伴い有利子負債が増加している。今後は、投資の成果を確実に刈り取り、財務基盤の強化と資本効率の向上を両立させていく必要がある。
セブン&アイ・ホールディングスは、厳しい経営環境の中で変革を迫られている。国内外の事業ポートフォリオの最適化、デジタル戦略の深化、そしてグループシナジーの追求を通じて、持続的な成長と企業価値の向上を実現できるか、今後の動向が注目される。